白亜の館

 宵闇公園より少し離れた小高い丘の上にちょっとした館がある。
今の私の館である。

 公園の近くをさまよっていたときに、ふと、濃い霧がはれ、
古ぼけた一軒の館をみつけた。近寄ってみると不意にその館の方向から、
「――お待ち申し上げておりました。聖と魔の間に生まれ出でし方よ。」
振り返ってみると誰もいなかった。
――ただ古ぼけた館があるだけだった。立ち去ろうとすると、また
「お待ちなさい。ここは、あなたの館なのですよ。」
そこにはおぼろげな人影がたっていた。
「あなたはいったい……どなたですか?」
「私は、この館の精霊。貴方が来るまで古より
 形を変えながら待っていました。」
「私は貴方を知らない。」
「私も貴方を知らない。だけど、私は貴方を待っていたの。」
「なぜ?」
「なぜって、これは予言されていた事。そして私はその方を
 お迎えするための精霊。貴方の聖と魔、一見相反する要素を
 両方持ち合わせた魂を感じ取れる精霊。また貴方の魂の一部。
 それが私。私は貴方。貴方は私。ここはそういう世界。」
 ―私は、はっとした。そう、この精霊が言っていた事は、
あまりにもあの言葉と似ていた。

  ……ワタシハダレ?
  ……ダレモ ワタシニ キガツイテクレナイ
  ……ワタシガ アナタナノニ
  ……100ニンノ ワタシ
  ……ココニ オイデ
  ……100ニンメノ フウインガ クルマエニ
  ……ワタシハ ココヨ
  ……100ニンノ アナタ……

「さて、私は最後のつとめを果たしましょう。」
と精霊が言うと、おぼろげな人影は消え、屋敷と私を覆い始めた。
すると、ついさっきまで古びれた館が、きれいに白亜の館に蘇り、
私を迎えるかのように門が開いたのだった。
「これからは私は、貴方の魂と融合し貴方とともに歩みます。
 おそらく私の声はこれで聞く事はないでしょう。この館を
 使うも使わないのも貴方の自由。貴方のこの世界において
 すべき事は自ずと見えてくるでしょう。それが、“本当の”
 貴方を見つける事にもなる事と思います。」
「ありがとう。名もなき館の精霊よ。ありがたくこの館は
 使わせていただく。」
私はそうつぶやくと館内に入った。

 結構な広さの館を見渡し、手に余ると思った私は日頃から
身につけている懐中時計をとりだし、それに魔力を込め、
秘印系の呪文を唱えた。この懐中時計は、私の眷属であり、
能力の守護者である執事のパルカス封印してある。
パルカスは、私の眷属の中で一番忠誠心が厚く頑固者である。
懐中時計はやがて本来の姿になり、私のそばに傅いた。
「お久しゅうございます。御主人様。再びお仕えでき
 光栄でございます。」
「また、おまえに執事と眷属として仕えてもらいたい。」
「もったいなきお言葉。謹んでお受けいたします。」
「うむ。」

ここの世界“宵闇街”での生活が始まった。…………



これは知人のリレー小説に投稿したショートストーリー2作目です
宵闇街での位置づけを解説するためのストーリーです。

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