招待状

 誰かが私の体を揺り動かしている…。
「………様。……人様。…御主人様。御時間でございます。
 起きてくださいまし。」
「う…うん。…ごめ〜ん。じぃ、もう少し寝かせてよぅ〜。」
「御主人様。起きてくださいまし。
 もう朝食の用意も調っております。」
「う…うん。わかった起きるよぅ。」
 私は執事であるパルカスに起こされ、いつものように
手早く朝の身支度をし、屋敷の食堂兼応接間に向かう。

ここの世界での使用人は執事であるパルカス以外は雇っていない。
またパルカスには苦労をかけているがその必要も感じていないのだ。
雇うにも未だこの世界を把握しきれていないという事に加え、人間界
においてでも追跡者に見つかっていないとはいえ、この世界の住人を
巻き込まないためにも、迂闊に雇うわけにいかないのだ。
未だ、見切れもなく私は逃亡者である事にはかわりがないのだ。
私にはパルカス以外にも眷属はいる。しかし、追っ手をかわすため、
あえて聖魔両陣営にそれぞれの属性によって残してきたのである。
私がすでに魔界から離脱している事実は一部の眷属のみが知っている
のみである。それぞれ口の堅い連中ばかりで、私に対しもっとも
忠誠を誓っている者達だ。
しかし、その者達を呼び寄せるわけにもいかない。
同一世界間においての召還は痕跡を残す事はないが、
異世界間においての召還は少なからず痕跡が残ってしまう。
召還自体は出来てもいまはその時期ではないのだ。

判っているのはこの世界『宵闇街』と私がつい最近まで、
この肉体がエーテル体状態の時に宿らせてもらっていた御主人がいた
人間界と非常に酷似しているという点である。
また、ネットのごく僅かなルートにおいて人間界と繋がっている
という以外は別世界で時空的にも歪みがあるようだ。実際、
私が時空の狭間に飛び込もうとしても跳ね返されるのだ。

そういう理由もあって、当分雨露しのげるこの屋敷と
私の眷属であり、能力の守護者である執事のパルカスがいれば
十分なのである。

「御主人様。お客様がお越しになるようです。」
テーブルについた私に白い差出人が書いていない封筒が渡された。
「じぃ、これは?」
「今朝、門のところのポストに入っておりました。僭越ながら、
 差出人が書いていませんでしたので開封させていただきました。」
「そうか。」
その真っ黒な紙にはこうかかれてあった。

  ようこそ、選ばれたアナタ!

  大観覧車が歓迎してくれる
      蜃気楼遊園地に無料招待!!

  開園時間は真夜中の
         AM1:00〜AM4:00

  場所は宵闇街2丁目の蜃気楼遊園地

「う〜む。じぃはどう思う。」
「まぁ、早速今夜行ってみられるのも一つの手ではないかと……。」
「判った、じぃ。私一人で行ってみる。チケットは一枚だけだしな。
 何かの時に備えて、留守は頼んだぞ。」

 私は昼間の間にいろいろと雑務をこなし、仮眠をすませた後、
深夜一人で、“蜃気楼遊園地”へ向かった。



これは知人のリレー小説に投稿したショートストーリー3作目です

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